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自粛明け、祖母は喋れなくなっていた 

 

   私の、コロナ収束後も忘れたくない、パンデミック下で経験したことは、祖母が認知症

を発症してしまったことだ。  
 誰よりもおしゃべりで笑顔の絶えなかった祖母だが、自粛期間中、誰とも関わることも

なく丸一日ベッドの上で過ごしたそうだ。  
 沖縄の中で感染者が1番多い那覇市に住んでいる私たちは、祖母を訪ねることもできず、

何より前例のない新学期の始まりでみんな自分のことだけで精一杯だった。  
 緊急事態宣言も解除され、コロナ感染も一息ついた頃、久しぶりに祖母に会うと、祖母は喋れなくなっていた。食事もろくに取らなかったようで、別人になったような祖母は要介護認定を受けた。病院が落ち着き次第、また通院するようだ。  
 祖父は施設に通っており、自粛期間中は施設内クラスターが起こらないように厳重な対面規制が行われていた。しかし、このような状況でも、施設や係の人と毎日会話をしていたので、久しぶりに会っても全く衰えを感じなかった。  
 この経験から、人とのコミュニケーションがいかに高齢の人には大切なものかがわかった。祖母が偶然この時期に認知症を発症した可能性もあるが、あの変わり様はやはり数ヶ月誰とも接していなかったから引き起こされたのだと感じる。  
 私の祖母だけでなく、一人暮らしの高齢者は、この自粛期間中孤独に苦しめられたと思う。デジタルネイティブの私たちと違い、オンラインで繋がることの難しい彼らは、パンデミック下の世界に置いてきぼりにされたようだ。  
 世の中に置いていかれたあとの最悪のシナリオが孤独死だと感じる。社会に取り残されることのないよう、私たちは絶えず繋がりを維持しないといけないと感じた。現在は行政機関などがそのような年配の方に対応しているが、まだまだ世間の関心が足りないと私は思う。  
 祖母が認知症になったのはショッキングな出来事だが、その記憶を大切にし、コロナ収束後も教訓として忘れずにいようと思う。  

現社 自粛明け祖母は喋れなくなっていた.jpg
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